世界で一番貧しい大統領の話と 無欲について考える

編集委員 Oより

ブラジルとアルゼンチンの間にある小さな国、ウルグアイをご存じでしょうか? 

そのウルグアイで、2010年から5年間大統領を務めた第40代大統領は、『世界で一番貧しい大統領』として世界的に有名になり、国民からも絶大な人気を集め、親しみを込めて今でもペぺと呼ばれています。 本名はホセ・ムヒカ、貧困家庭に生まれ、かつてはウルグアイを支配していた軍事政権と闘った元ゲリラ活動家で、質素な生活や地に足の着いた態度が国民に支持されて、大統領に就任しました。 就任後の2012年に、ブラジルで開かれた環境についての国際会議で、先進国の大量消費社会を強く、かつ優しい口調で批判、その揺るぎない信念を発した彼のスピーチが、会場に集まった各国の代表者の心を掴み大拍手を巻き起こし、全世界に感動を与えて、小国の大統領の名を一躍有名にしたのです。

彼は、大統領の公邸には住まず郊外の農場の質素な家に暮らし、サンダルを履いて身なりを構うことなく働き、中古車を愛用して自分で運転して大統領の仕事に向かい、大統領の報酬の9割近くを社会福祉基金として寄付しました。 これは日本の政治家にも、是非聞いていただきたい話ですね。

ウルグアイについて特集した某テレビ番組を、先日目にしました。街の人に聞くと、「ムヒカは弱い人に光を与えた」と言う言葉が返ってきました。例えば、同性婚を認めたとか、或いは貧困層の人に一戸建ての家を無償で支給する政策をとったとか、貧困層の自立を促したムヒカ氏の大統領としての政治手腕は、今でも語り継がれる程、すばらしいものだったのでしょう。

この大統領の話は、日本でも2014年に絵本として出版され、また昨年映画化もされました。 絵本の出版を記念して来日したムヒカ氏は、東京外語大学で若者を集めて演説をしています。

「生活に沢山のものは要らない、本当に必要なものだけがあればよい。命より大切なものは存在しない。」 と言うムヒカ氏のメッセージは、物が溢れ過ぎる消費主義の平和な日本に向けられた警鐘なのかもしれません。

絵本の中に、もう一つ心に残る言葉がありました。

『貧乏とは少ししか持っていないことではなくて、無限に欲があり、いくらあっても満足しないことです。』

仏教では、欲からの解放を目指していくという考え方がありますが、実際、生きている私たち人間には、様々な欲があり、またその欲があればこそ、生活も成り立ち、様々な楽しみもうまれ、生きる気力が得られることも事実です。私たち人間から欲を消し去ることは、難しいことです。

親鸞聖人の著作『一念多念文意いちねんたねんもんい』の中に、次の言葉がありました。

凡夫ぼんぶ というは無明煩悩むみょうぼんのう、われらがみにみちみちて、欲もおおく、いかり、はらだち、そねみ、ねたむこころおおく、ひまなくして臨終りんじゅう の一念にいたるまでとどまらず、きえず、たえず』

だからこそ、念仏を称えて、阿弥陀様にたすけを乞う・・・・・・真宗の教えの中に、答えが見いだせるような気がしました。

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